今人- Interview of imagine

茅根隼人 - Hayato Chinone
FC BANDIERA 常陸太田 監督

現代社会。人々の暮らしには必要なものが溢れ出している。その反面薄れゆく日々の喜びと大小様々な悩みや問題を抱きつつも月日が過ぎることに生命を繋げていく幸福論。時の流れは誰にでも平等であるが我々は幸運にも恵まれた国で暮らし、便利や当然に依存する私達は何か失われゆく感覚に耳を澄ます「今人- Imagine」の声に耳を傾け、より良い未来を創造、面白くしていく価値観を共有すること。本能的、潜在意識的に独自の活動を展開する人物にインタビューとして話を伺ってみた。



ー自己紹介をお願いします。


茅根

水戸市出身。10歳から常陸太田市芦間で育ちました。高校は日立工業高校サーカー部へ。卒業後は産業ロボットの会社へ就職しました。残業時間が半端なくって(笑)それでも地域の久米サッカースポーツ少年団での活動に理解を示して頂きサポートしてもらいました。指導者としてサッカーには関わってて子供達のボールを追う姿を見てたらまたサッカー熱が出て。自分が変わらないと子供達にも良い指導ができないと感じたんです。会社を辞め、新潟にあるジャパンサッカーカレッジへ入学して3年間、指導者の勉強をし資格を取得しました。その後23才で水戸ホーリーホックに入団。A級U12の指導者資格を取得。8年間プロ育成チームの監督として子供達へサッカー指導しました。現在は常陸太田市のサッカークラブチーム FC BANDIERA(バンディエラ)常陸太田を立ち上げ、監督をしています。


ー素晴らしいサッカー人生ですね。輝かしい実績の最中、プロ活動を休止し、常陸太田市でチームを設立した目的はなんだったのでしょう?


茅根

自分がサッカーで育った常陸太田市の小学校・中学校からサッカー部がなくなっていったんです。サッカーしたくても仲間がいない。できない。そんなの嫌だと。だったら学区を超えたクラブチームを作ろうと。地域のためというか、子供の為。自分も2児の父親になって強くそう思いました。




ー宣教師的ですね。サッカーで子供達を育成する。指導者になる学校で3年。プロチームでの8年を経て学んだことは?



茅根

サッカーを通じ、人として成長するということです。筑波大学の教授に学んだ教えです。プロ育成の下では各地からエリートの子供たちが入団するんですが、サッカーだけではない人間に育てるいうこと。教育の上での一つの観点としてサッカーがある。挨拶はもちろん、善悪も。例えば、茨城県の言葉の「訛り」や「田舎」ってことにどこかコンプレックスがあって、試合をする前に気持ちで負けてしまうことがある。自分がいる環境に誇りを持ち、サッカーの勝負にこだわってほしい。僕は子供達の試合時、誰よりも大きな声で「茨城弁・訛り」で叫ぶようにしています。「恥ずかしくはない。これが自分たちのスタイル。僕たちは最高なんだ。」と信じてサッカーをしてほしいんです。W杯などの世界大会で後進国が活躍するのは彼らには強い誇りがあるからなのです。


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ーなるほど。確かに土地も人もとても美しいと感じます。

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(バンディエラのホームグラウンド 旧常陸太田市立北中学校) 


ー誇りを持つ為の取り組みとは具体的にどのようなものでしょうか?


茅根

練習は午後、夕方からなので午前中は常陸農園で農業を手伝っています。その畑で皆でネギを抜いて食べたり、鬼ごっこしたり相撲したり、どろんこサッカーしたり。先日は体育館で父兄も交えたヨガを開催しました。
実は僕自身、若い時期はサッカーがうまくいってなくて。でもそれがあるからこそ今でもサッカーをやっているというか、いろんな経験が人生を切り開く力をくれてると感じています。全員がプロになれるわけじゃない。この中から一人プロになれば良いくらいです。そのくらい厳しい世界なのです。才能を見分けるのもチームとしての監督の役割。サッカーが上手いことが全てではないのです。リーダーもいればムードメーカーもいる。それがチームという個性の集まり。サッカーを通じて自分と自分以外を知るきっかけになる。


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ー確かにチームスポーツは人間関係や社会生活の縮図のように思います。農業、どろんこ相撲。都会の子供ではなかなか体験できないかもしれないですし、きっとサッカーだけでは得られない友情もありそうです。


茅根

今後はアートの感覚も取り入れたいなと。その為にチームメンバー募集のポスターデザインを絵画アーティストに依頼するところから試みました。するといろんなアイデアを頂けたんです。例えば「サッカーボールに絵の具をつけてボール蹴って絵を描く」「足に絵の具をつけて音楽でダンスし絵が描かれる」とか。グラウンドとして使用させてもらってるこの北中学校も廃校になってしばらく経つんですが、売却の話や耐震設備の問題などで施設自体が宙に浮いた状態で市の教育委員会が管理しているんです。チームの存続もあるけどもちろん地域として何か良い利用方法はないかと思いアートの力を借りることはできないかと思っています。校舎や体育館を有効利用できるはずです。神奈川県相模原市(旧藤野)に廃校になった小学校が今はアーティストレジデンスになり、教室ごとに様々なアートコンテンツで利用されている実績も知っていますし、アートや音楽の持つコミュニティには以前から興味がありました。

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 ー進んでいる地方行政は率先してアーティストの意見を汲み取り地域利用に働きかけていますね。私達も旧施設が行政主導によって生まれ変わる祭のイベントに招致頂き講演した経験等あります。その地域の行政担当者次第で温度が変わるのも否めない印象ですが、その中で実際の利用者を得る為にどう切り開いていくか?が課題となるかと思います。(ここで運営母体である法人の理事長 渡辺聡(建築士)さんもインタビューに参加)


茅根

この中学校の卒業生を筆頭に、いわゆる民間の様々な団体、活動家、アーティストの方々の意見を拝聴、ご協力を頂きながら、行政や地域住民へ施設利用と存続の必要性を伝えていく中で、それぞれに考えていただくことができればもしかしたら何かが変わるかもしれないと。まずはディスカッションのような現状の説明会の意味合いを込めたイベントを開催し、広くご参加いただければと考えています。廃校というネガティブなイメージをいかに前向きに面白く変換していくかが、先ほどお話した「誇り」に繋がると信じています。その為にはやはり音楽やアートの力は必須なんです。


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渡辺

常陸太田市も実はアーティストレジデンスをやってるんです。クリフトのアンブレラも。過去にも実績がある。県北芸術祭も。もしかしたらここにも可能性はあるのかなと。例えば今現在、校舎や体育館には耐震強度の問題があって責任の所在の為に利用者が一筆書いています。
お金の問題ならば利用料金をどうするか。補助の適用は?まずははっきりとした上で細かい紙の作業・手続きをクリアしていく。壊すなんてナンセンス。



ー壊すにも多額の税金がかかります。それなら問題の内容をはっきりさせた上でお互いの合意の元に契約、利用者の補助金として使うのが税金の正しい利用です。過疎地に「楽しみ」が生まれ「生きがい」を得ていく人々が増えるわけです。お二人のような「思い」や「情熱」が今はどこか諦めにも似た状態で軽視されているのかもしれません。そんな風潮がある中で団体としてとても貴重な存在だと思います。ただのサッカーチームではない。


渡辺・茅根

情熱無くしては試合に勝てません(笑)実際、今現在100名ほどの小・中学生、土日は遠征がなければ60~80名の中高生・社会人がこの旧北中学校に集まってサッカー・フットサルをしています。皆が集まって体を動かすことでのコミュニケーション・コミュニティ・健康の大切さを感じてくれているはずです。まず単にそんな場所を無くしたくないですよね。例えば高齢社会というなら高齢者に教室を解放する。1組は高齢者。2組はIT室。3組は英会話スクール。保健室を昼寝部屋。美術室、音楽室はアーティストが管理解放。図書室、視聴覚室。グラウンドや体育館。あるいは市で行なっているUIJターン・起業・創業支援事業の一環としてオフィスとして提供したり。起業者・創業者とアーティストとの交流の中から新たな事業展開や文化が生まれてくるのではないかと期待が持てます。いわゆる学校では学べない、垣根を超えた教育、生涯学習の共存。利用者が限定されている現状の公民館などと比べても設備も多様性もあって未来的だと思うんです。きっと税金に頼らない雇用も生まれるはずですよね。

 
ー国や県レベルでこういった施設の二次利用に簡するガイドラインを作成しないのか。この奇妙なシステムに情報社会において皆が気付き始めてます。やはり世論といった影響力が必要なのでしょうか。地域においても同様となり、お二人の今後の活動がより精力的になる気がします。



渡辺・茅根

そういうことになります。行政との対話のきっかけを経て旧北中学校の存続の会(仮)を立ち上げ、具体的な活動方針を検討中です。
アーティスト、団体、個人事業者の方、様々な方々のご参加・ご協力をお待ちしています。
どんな内容でも構いません。利用者がチームとして活動できるようなアイデアや企画コンテンツを募集しています。
FC BANDIERA 常陸太田までお気軽にご連絡ください


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ーありがとうございました。

 

Interview at 旧常陸太田市北中学校 / Photo by meiko / @DigitalDish studio inc.2018.11.30



鈴木 拓也 - Takuya Suzuki
ROOST スタイリスト/ オーナー

現代社会。人々の暮らしには必要なものが溢れ出している。その反面薄れゆく日々の喜びと大小様々な悩みや問題を抱きつつも月日が過ぎることに生命を繋げていく幸福論。時の流れは誰にでも平等であるが我々は幸運にも恵まれた国で暮らし、便利や当然に依存する私達は何か失われゆく感覚に耳を澄ます「今人- Imagine」の声に耳を傾け、より良い未来を創造、面白くしていく価値観を共有すること。本能的、潜在意識的に独自の活動を展開する人物にインタビューとして話を伺ってみた。



ーまずは自己紹介をお願いします。


鈴木 

ROOST hair design スタイリスト・オーナーです。常陸多賀駅前のサロンで10年以上スタイリストを経験し、5年の店長職を経て昨年、日立市東多賀町に独立開業しました。開業当初はやはり不安でしたが、お陰様で予想以上の成果を達成しています。先日一周年のイベントを開催しお世話になった方々へ感謝の気持ちを伝えることができました。


ー大変転機となる一年だったと察します。そんな中、一方で美容師さんはお客様と一対一での対話が仕事としてあるかと思います。責任と立場が変わる中の10年という時間で感じている雰囲気や変化などあれば教えてください。


鈴木 

僕は生まれも育ちも常陸多賀なんですが、昔からここは熟年層の街という印象はありました。それを踏ま得た上でも率直に若者がいなくなった印象が強いです。いるんですが、いれない。いる場所がない。映画館やクラブなんかもあったんです。でもそれが街の都合で消えていく。勿体無い。そういったのは実際問題として感じますし、若いお客様の声からもどこでどう参加していいのかわからない、コネクションがなければよそ者として淘汰されてしまう、など、そういった話を聞くことはかなり多いです。ある意味でビジネスコンセプトとしてこの地域の資質に固執しない。そのような考え方は今後大事と感じました。この時代に沿った方法で様々な人々が様々な方法でリサーチしているはず。ですので地域密着というよりはあくまでもプライベートサロンとして安心して来店できる雰囲気を心がけています。

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ーなるほど。ですが、地域に存在するアーティストに店鋪設計やデザイン、イベント等での出演オファーなど、積極的に器用しています。その理由は何ですか?


鈴木

同じことです。失礼になりますが、地元の業者にお願いすると、マニュアル通りのデザイン設計になってしまう。実際なってしまった。困りました。そんな中、茨城県の事業でかどやという古民家シェアオフィスに誘致されたアーティストがいると知人から伺っていたのでとりあえず話を聞いてみようと。そんな経緯があります。そこには自転車で全国一周してる途中のスタッフや、レストランシェフ、ミュージシャン、芸術祭のアーティストやキュレーター、ボランティアスタッフなどが出入りしていた空間があなた方のオフィスでした。たまたまでしたがとても面白かったんで色々お願いしたいなと。僕はアートを理解できるかといったらどうかわかりませんが、その方々の考え方や取り組み方など、感覚として共感できました。僕はあくまで美容師なので何か仕事を共有してやっていこうと決めました。実際共に仕事をさせて頂いてからわかったことですが、そういったアーティストの方々との交友関係は、第三者であるお客様や同業者や取引先からするとすごく興味の対象となっているのを感じました。アーティストの方々との交流が店鋪のブランド力になっているのです。驚きました。



ー1周年イベントを常陸多賀のコミュニティスペースCocoonで開催したのもそういった理由ですか?


鈴木

はい。この街でアーティストが集まっている場所だと思っています。一周年イベントに弾き語りでの出演を依頼したあなた方のボス、SINSENさんもCocoonで活動していますし、大家さんの長山さんも知人です。Roostに飾ってある絵画も北茨城地域おこし協力隊の画家、檻ノ汰鷲さんの作品です。SINSENさんからも絵画を預かってます。この取材で僕を撮影してくれている方々の合同写真展「13」も楽しみにしています。


ーありがとうございます!(撮影スタッフ)

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ー見事なまでに完全ご招待のおもてなしパーティでした。


鈴木

もちろんです。お世話になってるお客様、友人、知人に還元したい気持ちでしたので。参加費を取るのはナンセンス。その場は僕が責任を持つ。そしてそこから新しいコミュニティが生まれていくことは嬉しい限りです。イベント当日は長山さん、スタッフさんには大変お世話になりました。またやりたいですね。


ー実際にそのイベントで新しい関係が生まれ、アート活動が開始したのを確認しています。まさに鈴木さんが創作したコミュニティです。


鈴木

伺っています。素直に嬉しいです。やってよかった。これは僕のビジネスに直結せずとも必ず成果としてどこかで出てくる。そう感じます。冒頭の話に戻りますが経営者レベルの方でアーティストの活動と連携できる、興味がある、そんな人物があと10人、いや5人いるかいないかでこの街も若者が動き出せる環境が整うのかもしれません。アートに対して無知だった自分からの今、この一年の経験を経て強く感じています。


ーそうですね。きっとそういった方々はすでに時代のキーマンになっています。今後増えていく可能性はありますか?


鈴木


大いにあると思います。なぜなら地元密着の人はその理由が地主だったり、2代目3代目だったり。長年の居住と共に地元に力を持っていたりするのです。古い仕来りや考えから脱却できる柔軟性と了見、特に経験があればきっと変わっていくでしょう。その経験を与えるのがアーティストの役割かと感じていますが違いますか?



ーご名答ではないでしょうか。私どもが知るアーティストは感動や考えを共有・経験させる役割を担っています。いわゆる自己中心なイメージとは真逆の、面白く繊細で、傷つきやすいが故に他人を思える人物ばかりです。アート、アーティストの重要性をどう感じていますか?



鈴木

アートやアーティストを取り巻く関係のそれは、商店街や派閥など利権のある繋がりと形成自体違いますよね。お祭りなんかがその役割だったのかもしれませんが今や見る影もない。それなら楽しみや感動の共有ができる繋がりこそが現代的で未来的です。人間性の好き嫌いはどこにでも存在します。そこに焦点を置くのではなく、インターネットやデザインという趣味の世界が無限に選択肢としてある昨今、一つのアイコンとしてアート、アーティストが存在するのではないでしょうか。そういった意味でも非常に重要で貴重な存在ですね。この茨城県、さらには日立市では尚更貴重。本物が少ない割に目立たない。だから少しでも力になり目立たせてあげたい。

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ーなるほど。経営者として結果出されている中で理に叶った説得力です。アンディー・ウォーホールが同じような考えでザ・ファクトリーを設立したことが頭に浮かびました。

ー最後になりますが今後の経営者としての方向性と一言をお願いします。


鈴木

純粋に日々頑張るだけです。何かの力には流されずに自分自身の感覚を信じて行こうと思います。その意味でもアート、アーティストはとても面白く興味深いですね。
僕らはまだまだ若いですがとにかく現状維持は良くないので何かしら変化を意識したいです。


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ーありがとうございました。

Interview@Roost hair desigh / photo by 瀬矢 / ©︎DigitalDish studio inc. 2018.9.26